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やはり人気[ひとけ]のないクラブハウス文化部館。 グランドの方は朝練をする声が聞こえるけれど、こちらは静かなもの。
南は鞄[かばん]から合鍵[あいかぎ]を取り出してドアを開けた。
「んー、やっぱ鍵は部長の特権よね♪」
くるりと部室を見回して、机の上に置いたままだった参考書を取り上げると鞄に詰めた。
「さて、鍵閉めてっと…ん?」
目にとまったのは、札[ふだ]の貼ってある硝子[がらす]の小瓶[こびん]だった。
きっかり蓋[ふた]のしてあるそれは、スカートのポケットに入るくらいの小さなもの。
「誰よ、対悪霊用道具をこんな所に置きっ放しにしてるの」
南はそれをつまみ上げた。
→ あーもー、ちゃんとしまっときなさいよね。
→ …護身用に持っとこうかな。