「頭痛くて、このまま授業受けても辛いと想うんで、帰ります」
痛む部分に手をやると、ぷくりとたんこぶができていた。
(うぅ。痛いはずね)
こぶをさすりながら南はベッドを降りた。
「そう。じゃ、新元[あらもと]先生には『早退した』って言っておくわね」
「はい。お願いします。あ、それとコレ、ウチの部員に渡しておいてもらえますか?」
社会科学習室に新入りが出た旨[むね]をメモに書いて、宇野田先生に渡す。
「わかった。芦澤[あしざわ]君か賀田[かだ]さん辺りに渡しておくわ」
「すみません。お願いします。じゃ、失礼しました」
宇野田先生にぺこりと頭を下げて、南は保健室を出た。
授業中の教室から鞄を取ってきて校門へと向かう。
4時間目担当の英語の伊沢ちゃんには、「そりゃ災難だったなぁ」と言われたけれど、 答える気力もなくて、南はとりあえず「はぁ」と相づちを返しておいた。
学校を出てバス停へととぼとぼ向かうと、目に入るのは雲ひとつない空。
何だか悔しいくらいだ。
(この借りはいつか絶対返すから、待ってなさい新入り !!)
心の中でリベンジを誓って、南は帰路についた。
「うぅ。今日は厄日[やくび]かも」
たんこぶの痛さに涙目になっていたのは秘密という事で。
The End.