トオイツミ




 それは、望んでそうなったのではないのだけれど。
 きっと、私は許されない。
 きっともう、あの笑顔に出会えない。






アノヒトヲコロシタノハ、オマエダロウ?





 耳について離れない、声。
 目の前の、アカイ色彩。





 気がついたら、スベテが終わっていた。





 私にできることは、ただ違うとかぶりを振ること。
 耳を塞いで目を閉じて。
 ただ違うと告げること。





ソレデモコレハ、オマエノセイダロウ?





 耳につく、声。





 彼には会えない。絶対会えない。
 もう、会えない。






「遠くへ、行くか?」






 逃げるようにあの地を去った。
「二度と戻れないかもしれない」
 それでもよかった。
 もう、耐えられなくなっていた。





 逃げるようにこの地へ渡って。
 知らない土地。知らない文化。
 知らない、ひと。





 それでも、優しかった。





 私のこころは癒されて。
 ひとりでも、生きていけるようになった。





 …けれど。





オマエハ、ユルサレナイ。





 声は、離れることはなくて。
 傷は、ふさがることはなくて。






「お前に、会いたいそうだ」






 何年ぶりかの報せ。





 審判のときはほら、
 もうそこに、迫っている。









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