むらさき。




私たちはね、悲しい生き物なの。
紫のこちら側でしか生きることができないの。
紫のあちら側では、生きることができないの。
紫の向こう側では、私たちは壊れてしまうから。
壊されてしまうから。


それでも、目指した仲間はいたの。
紫の向こうを知りたくて。
紫の向こうに行きたくて。
こちら側からふねを出したの。
…帰っては、来なかったけれど。
決して帰っては来なかったの。


はじまりが赤ならば、紫はおわりなの。


それが私たちの結論。
あまりに多くの仲間が焦がれていたから。
あまりに多くの仲間が旅立ってしまったから。
残った私たちはそう思うことにしたの。
もう誰も、紫の向こうへと行かないように。
壊れることのないように。
壊されることのないように。


それでも焦がれる、紫の向こう。
手の届かない、硝子板の向こう。
夢想する、存在できない世界。





   追記

     どうやら可視光線および短波長・長波長を思って書いたようです。



TOP   CLOSE   HITOHIRA