ポストにゃん。





 朝起きて、学校行く支度を秒刻みで嵐の如く整え、行ってきますと扉を開けると、 玄関先に旧型赤ポスト(円柱型)が立っていた。しかもこちら向き。
「やぁ、おっはよーん♪ ぼくはポストにゃ……」
 ガスッ。
「っくぅっっ」
 問答無用で殴ったが、さすが金属製。ダメージはこちらの方がでかいらしい。 赤くなった右手をかばいつつ、電車に乗るため猛ダッシュで駆け出した。
 ……30秒程損した。



 学校で、今朝いきなり家の前にポストが立っててさぁ、と話したところ友人いわく。
「ふーん、便利になっていいじゃん。ウチん家[ち]の近くのポストなんてさぁ、 坂道10分歩かなくちゃなんなくてさぁ(以下略)」
「へぇ旧型なんて珍しいねぇ。今ってハガキの分別とか機械化が進んでるのに(以下略)」
 やはりポストが音声を発するとは思わないらしい。



 夕暮れ時、帰ってくるとやはり道のまんなかに旧型赤ポストが何気なく立っていた。 …車は通らなかったのだろうか。
「やっ、おっかえりー 改めて自己紹介するねっ♪ ぼくはポストにゃん。 昨日の夜中にここに連れてこられ」
 ばこんっ。
 テニスで鍛えたスマッシュのスイングを駆使し、靴で殴ってみた。うむ、やはり金属。 手に痺れが走った。だが朝よりはいくぶんましである。…と、腹が鳴った。
 飯[めし]にありつくため、赤い物体を無視して家に入ることにした。
「えっ、あっ、ちょっ、ちょっと待ってよ。ねえ待っ」
 晩飯はご飯と味噌汁とトンカツと佃煮少々。美味かった。



 翌日の朝、昨日より5分ほど余裕を持って家を出た。やはり家の前には旧型赤ポストが 立っていた。しかし、色が全身赤からまっ黄色になっていた。
「あっ、おっはよーんにゃ ぼくはポストにゃん。 昨日はとっとと帰っちゃうんだもん。ポストにゃんさみしかっ」
 バキィッッ。
 手にした木製バットが真っ二つに折れた。ふっ、さすが金属製。だが塗装に少し傷がついた。 まあ、よしとしよう。
「あーっ、何するんだよぅ。ポストにゃん、やっと赤じゃなくなったのにぃぃっっ。 キズついちゃったじゃないかぁっ☆ ねえちょっ」
「木製バット(残骸)って燃えるゴミでよかったっけな……」
 ……木製バット大破に、母親にかなり叱られた。



 数日後、友人に言われた。
「なんかさぁ、最近妙にたくましくなってない? いや、気のせいかもしんないんだけどさぁ。 ほら、何ていうか(以下略)」
 今日はやっと手に入れた金属バットで、あの桃色と蛍光緑色のまだら旧型ポストに、 足技とコンボを決める予定。絶対蹴り倒してやるつもり。



「はっろーんっ♪ ぼくはポストにゃん。よろしくねっ☆ ポストにゃんは自分では 動けないんだけど、よく夜中とかに勝手に運ばれちゃうんだ★ 粗大ゴミ置き場に運ばれた 事もあるんだよ♭ まったく困ったさんだよね? ポストにゃんはさみしがり屋さんだから、 暇だったら話し相手になってね そこの君、お願いだよっ☆ んじゃ、 今日も元気なポストにゃんでした。またねっ♪」


The End.  



あとがき…らしきもの。

 あははははははは。
 えーとぉ……(汗)。
 夜中(AM1時すぎ)に思いついてそのまま書き上げた話です。
 見事に壊れてますね。
 主人公のイメージが、皆様バラバラで面白いです。雪山を模しているのでは?  と言われたこともあるのですが、電車に向かって猛ダッシュするくらいで(←ほとんど毎朝・涙)、 他は違います。…違いますってば。
 パソコンの記号にハートマークが無いことが残念でなりません。ワープロでは出たのですよ。 なのでワープロヴァージョンでは白抜きのハートが使われております。
 「ポストにゃん」が密かに「ポストマン」と掛かっている事は、ナイショです。


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