例えばそこが空の果てでも、
果ての向こうにあなたがいても
あたしは走ってゆくから。



例えばそこが海の底で
潰［つぶ］されそうな圧迫感の中で
優美に泳ぐ魚名［サカナ］を見たなら。
そのまま
沈んでいっても良いと思う。



例えばそこが崖［がけ］の淵［ふち］で
見下ろすとはるか下、遠くに葉を繁［しげ］らす翳［かげ］った木。
誰かがわたしの背を押すなら
水色と淡灰色の混じった空を心に焼いて
落ちてゆくのも良いかもしれない。



例えばそこが目睡［まどろ］めるところで。
心安らかに眠れる所であっても
歩き出す覚悟がないのなら
足を踏み入れてはいけないの。
沼に嵌［は］まってしまうから。
だって、そこで終わるつもりもないのでしょう？