あかいはながさいた
「あかいはながさいた」
やっと『時』が満ちたんだわ、と彼女はそれはそれは嬉[うれ]しそうに、ほら、 と私に差し出した。
見ると、それは夕日に赤々と染まり、太陽と同じ色に輝いていた。
「大好きな花なんだけど、なかなか花が咲かないから心配してたのよ」
育てるのって、ホント大変だわ、と手の中にある太陽を見つめつつ、 感慨[かんがい]深げにそう言った。
「あかいはながさいたから、やっとわたしはかえることができるの」
彼女の顔には、嬉しさがにじみ出ていた。
「やっと『時』が満ちたのよ」
彼女の顔は、夕日の所為[せい]か不思議な色に光っていた。
翌日、私が彼女のもとを訪れると、彼女は、胸に赤いはなをさかせて眠っていた。
枕元には、あの赤い花が置かれていた。
色の少ない部屋に咲く、鮮やかな赤、あか、紅[あか]……
『あかいはながさいたから、やっとわたしはかえることができるの』
やっとわたしは還ることができるの……
あの方のもとへ。
部屋を染める、赤、あか、紅[あか]……
『あかいはながさいた』
赤い花が咲いた。
赤い華が裂いた。
『あの方のもとへ還れるの』
赤い花は、満足げに咲いていた。
「あかいはながさいた」
私はそう、呟[つぶや]いていた。
The End.
あとがき…らしきもの。
えーと、コレを書いたのは高校の時です。
ブラックですが、雰囲気はかなり好きかもな一品です。
んと、少々補足しておくと、あの花は「吸血花」だったということで(苦笑)。
どうも雪山の中では「あか=血の色」という方程式ができているご様子ですね。
毒々しい紅。というか、何というか。
あ、モノホンは苦手です。映像とかも駄目で、気持ち悪くなります(スプラッタ苦手・汗)。
こういう文字ならまだ大丈夫らしいですが(苦笑)。
2001.10
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