アカク咲ク花




 気がつけば、赤い色に囲まれていた。
 広く、見渡す限りの草原は、赤い色に埋めつくされていた。
 ざわざわと揺れる、赤、赤、赤…。

(ヒガンバナ)

 曼珠沙華[まんじゅしゃげ]とも呼ばれる緋色の花。それが、見渡す限り広がっていた。
 陽[ひ]は落ちかけて、辺りは夕焼け。その朱[あか]が、さらに花を色づかせている。
(ここは…?)
 知らない場所[ところ]。

「知っている筈[はず]だよ」

 心を見透かす声にびくりとする。視線をめぐらすと右手の奥に、いつの間にか人が立っていた。 逆光によるシルエット。

(…少年[こども]?)

 誰ソ彼[たれそかれ]。
 顔の明瞭[はっきり]しないシルエットに、その言葉が浮かんだ。
 黄昏[たそがれ]は『誰そ彼』から生まれたのだと聞いたのだ。

 ざわり。

 強く吹く風。揺れ動く、赤いヒガンバナの群れ。
 そういえば、ヒガンバナは毒だと言っていたのは誰だったのだろう。

(…毒?)

 捕[と]らわれてしまう。
 途端[とたん]、その感覚に強く襲[おそ]われた。けれど、逃げ出すこともできずに立ちつくす。
 開かれているはずの空間に、閉じ込められたような感覚。
 夕焼けに染まる空。染まる、緋[あか]。
 ふと何処[どこ]からか、唄[うた]が聴こえた。何重にもなる、子供たちの声。


   ちんぺん こんぺん
   ままごとしましょ
   おまえらとしたら
   よせらかしてなかす


 昔、祖母に教えてもらった唄。ヒガンバナの茎[くき]を折って、首飾りにする、唄。
 ぺきぺき折って、柔[やわ]らかくして、茎の先と花の元を結んで輪にすると出来上がり。
 赤い、大きな花の首飾り。

 首飾り。

 いつの間にか目の前には少年がいて、私に花輪を差し出していた。
 緋色の花輪。
 私の首に…。
 ああ、私も捕らわれてしまう。

(私?)

 不可解な思考に、辺りを見回す。

(……)

 花の隙間[すきま]に、横たわる人のカタチ。土の上で、眠るヒトビト。
 私の周りを埋[う]めつくす。
 その傍[そば]から、ひとから生える、ヒガンバナ。
 ゆらり、揺れる視界。
 緋[あか]の世界。

 ヒガンバナは毒だと言っていたのは……。


 少年のにやりとした笑みを最後に、私の意識は闇に沈んだ。


The End.







あとがき…らしきもの。

4限に降臨して、5限中に書き上げたというシロモノです。
5限の先生、ごめんなさい。でも一応、聞くのは聞いていたんですよ(汗)? ケータイの話だし。
4限で降臨した時は、いきなり生まれたので、慌ててノートに書き留めてました。 情報処理概論だったので、黒板多いし、しっかり聞いてなくちゃ駄目なのにぃぃ(汗)。 生まれる時って突然なので、いつもどうしようかと焦りますね。しかも、 コレとコンピューターって全然関係ないやん(泣)。…今回は、ノートがあってよかったです。

にしても、この話あるイミ意味不明ですね。「あかいはながさいた」系?
あ、「あかい〜」載せてないですね。…いっか、載せてしまえ(壊)。
ということで、激短編「あかいはながさいた」はコチラ
ブラック覚悟で読んで下さいね。

そうそう、中に出てくる唄。あれは私が実際祖母に教えてもらった唄です。
あれ歌いながらぺきぺき茎を折ってくんです。もちろん、最後の一皮は残してつなげて。 で、くにゃっとなったところで、花の付け根と茎の根元を結んで首輪の出来上がりv
んー、懐かしいですね。あ、ちなみに毒があるっていうのは本当ですよ。 だから触った後は、しっかり手洗いして下さいね。ではでは。

2001.10



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