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「あたし達じゃ対処できないわ、コレ。稲見[いなみ]先生を呼んで来ないと」
「稲見先生、ですの?」
 倫理の稲見先生は、悪霊退治部[ゴーストバスターズ・クラブ]の顧問[こもん]を務める先生だ。
「ん、そ。春日さん、悪いけどソレ、処分する事になると思うわ。臼原先生には言っておくから、 別のプレゼントもらってくれる?」
別にィー。 興味ナイから好きにしてもらってイイわよォ?
 向こう側の透けた彼女は、そう言ってけらけらと笑った。
「よかった。さ、姫木、職員室に行くわよ」
「はい」
 ご機嫌な<囁きの美女>を後にしながら、2人は職員室へと向かった。








 デスクワークをこなしていた稲見先生を連れて再び多目的ホールへと戻って来た南と姫木は、 用具室の前で足を止めた。
「この先はひとりで行くから、東都と姫木はココで待っていてくれないかな」
「はい」
 2人の了承に、優面[やさもて]の社会科教師は1人、 小さな鞄[かばん]を抱えて用具室へと入って行った。
「大丈夫…でしょうか?」
「わからないけど、でも稲見先生は、あたし達より強い呪[しゅ]を扱うから…」
「そうなんですの?」
 驚く姫木に、南はそうなのよ、と返答した。
「何でも、先生の家がソレ系らしくて、ここに振られたのもそれが関係してるとか」
 噂だけどね、と冗談めかす南に、姫木は「そういえば」と思い出したように告げた。
「新入生のオリエンテーションで、足を踏み入れない方がいいスポットを説明されていたのって、 稲見先生でしたよね。悪霊退治部の顧問をなさっているから説明に当たられたのだと思っていましたけど」
「それもあるんじゃないの? あたしが入学した年も、先生が説明してたしね」






「お待たせ」
 しばらく扉の前でしゃべっていると、そう言いながら稲見先生が顔を出した。
 その手には、札[ふだ]が貼られ、紐[ひも]でくくられたあの『箱』があった。
「悪いけどこれ、浄化層に納めておいてくれないかな」
 言って、箱を差し出す。
「きちんと封じたから大丈夫だよ。…臼原先生には、僕から話しておくし」
「あ、お願いします」
 コレの出所も気になるからね、と苦笑する先生から『箱』を受け取って、 2人は多目的ホールを後にした。




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