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「さっき部室から持って来たわよね」
ポケットに手をやると、小さな硝子[がらす]の小瓶[こびん]。
「『校則第58条2項【校内に存在する意識体について】の12、 器物破損[きぶつはそん]を起こしたもの、またはその可能性の多いあるものについて、 緊急時に武器の使用を許可する』ってね」
蓋[ふた]を開け、意識体へと向ける。
「かつて器ありきもの。世界へ溶けず形在[あ]るもの。意識によりて世界に在るもの。 我が手にある『世界』を満たせ。汝[なんじ]が名は創造主[せかいのあるじ]」
南の言葉に反応して、手の中の小瓶が熱を持つ。それと同時に男の姿がゆらめいて、 それが消えた瞬間に小瓶が重くなった。それを逃さず蓋をして、 仕上げとばかりに札[ふだ]をぺたりと貼りつけた。
ガラガラガラゴトゴチバコッ…
その途端[とたん]、ものすごい音を立てて浮かんでいた机や椅子[いす]が落下した。
思わず耳をふさいでそれをやりすごす。
音がおさまった社会科学習室は、台風でも通り過ぎたかのような有様になっていた。
「コレを戻すクラスは災難よねぇ」
こういう事に慣れている白露高校では、 悪霊被害の後片づけはクラス毎の当番制になっているのだ。
「さ、誰か先生に報告して…」
と、手の中の小瓶に目が止まった。
→ ま、後で浄化層に持って行けばいいか。
→ 面倒くさいけど、浄化層に納めないとなぁ。