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 廊下の電気がふっと消える。遮られる視界。
 南の利き手には短刀が握られている。
「非常等の前だ !!」
 特殊な波長を捉えるゴーグルをかけた相方の言葉に、南はダッシュをかけて、 その空間を下から上へと切り裂いた。
 何もないはずなのに、手元には抵抗がかかる。
「ビンゴっ !!」
 そのまま身をひるがえして距離をとる。
 キィィィン…と耳が痛くなり、空間が歪[ゆが]んだ。
 ゆらり、と現れたのは、例の頭なし男だった。
「寺元っ !!」
「わかってる」
 寺元はゴーグルを外して南の前に出ると、籐[とう]の籠[かご]を標的に向けた。
 口には短い笛をくわえている。
 南が耳をふさいだのをちらりと確認すると、寺元を笛を鳴らした。



 ピィ―――――――――――



 高い音が空間を満たす。そのまま籠の底を3度叩[たた]いた。
 それだけで標的に姿が歪み、籠の中へと吸い込まれ――――――



 ぱたり。



 蓋[ふた]をしっかりとしめて笛を止めると、寺元は大きく息をついた。 ぺたりと札[ふだ]を貼る。
 それを見て南も手をはずし、寺元のそばへと寄った。
「標的、封印完了」
 シーバーのスイッチを入れ、作戦終了を告げる。それと同じくして、 消えていた廊下の電気が何事もなかったかのように再び点灯した。
「やったわね」
 右手を上げて寺元に近づくと、宙でぱちりと合わせた。
「さっすが寺元よね。扱うタイミング心得てるから、やりやすいわ」
 南がにこにこと褒[ほ]めると、寺元は満更でもなさげにふっと笑んだ。
「…にしても、大丈夫かしらね、芦澤」
 逃げられた、という事は何かあったのだろう。
「行ってくるか?」
「うん。悪いけどここの後始末おねが…」
「封じたみたいだな」
 廊下の向こう側からひょっこりと現れたのは、今話題にのぼった当の本人、芦澤だった。
 南は姿を認めると、小走りで駆け寄った。
「大丈夫なの?」
「ああ、まぁな」
「それならいいけど。…ったく、何やらかしたのよ?」
「いや、その…」




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