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「芦澤、状況に応じて『ミッション6〜8』辺り使って指示取って。皆は、 芦澤の指示に従って現場で行動。あ、姫木、悪いけど残って頂戴[ちょうだい]。 その他は現場へ急いで」
「部長?」
「気になる所があるのよ。だからそっちはお願い」
「…わかった。行くぞ」
南の強い声に何かを感じたのか、芦澤は頷[うなず]くと、部員を連れて現場へと向かった。
「さて、こっちもとっとと片づけて合流しないとね」
「部長、気になる所とは?」
「んー、ちょっとあそこがね…」
言いつつ、本棚へと近づく。
「もやもやした嫌な感じがちょっとするんだけど、姫木、何か視[み]えない?」
言われて姫木はすっと目を細めた。本棚の辺りに意識を集中させる。
と、本棚のある箇所[かしょ]が赤い色を帯びて、姫木の視界に映った。
「 !! 部長、左上の、あの本が」
背の厚い本を下ろし、机の上でぱらぱらとめくる。と、 途中に挟[はさ]んであった紙切れがひらりと落ちた。
「何これ?」
折りたたんであったその中身を見た途端、南の顔つきが険しくなった。
「どうかなさいまして?」
「どこで誰が手に入れたのかしらね?」
呆[あき]れたように言いながら、それを姫木に見せる。
「これ……『呪[しゅ]』、ですわね」
「どー見てもそうよね。しかも、間違いありまくりの」
「え?」
怪訝[けげん]な表情をする姫木に、南は箇所を示して解説した。
「『ここ』と『ここ』と『ここ』。どー考えてもおかしいのよ。関連性の全くない文字が入ってるし、 しかもソレのせいで力の流れが狂って安定性がなくなってるし」
「…解読、なされますの? 部長」
「あーまぁ、あれだけ古い本読まされれば、わかるようにもなるわよ」
驚きと尊敬の混じった姫木の様子に、南は苦笑して言った。
「それより、これ放っといたら、またここに何か出るかもしれないわね」
「どうなさいます?」
「ん――……。燃やす?」
真顔で告げた南に、姫木は一瞬、固まった。
「え? で、ですけれど、何かの証拠などにとっておかなくてよろしいんですか?」
「…だって、普通の呪ならいざ知らず、こんな中途半端な危ないモノ、保管する方が危険じゃない」
「そう、なんですの?」
「そーよ。って事で、外に出るわよ」
「はい」
呪の書かれた紙片を手に、二人は社会科学習室を後にした。