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悪霊退治部活動記外伝
東都 南のある1日。



 バスが角を曲がって、日の射す向きが変わる。
 朝の低い角度から射す光をまともに浴びて、 東都 南[とうづ みなみ]は眩[まぶ]しそうに目を細めた。

「次はー、白露台[しらつゆだい]6丁目ー。白露台6丁目ー」

 駅とは反対方向に向かうバスは、登校ラッシュにはまだ早いため、 人はまばらでアナウンスも良く聞こえる。南はそのアナウンスを耳にすると、 ためらいなく四角いボタンを押した。




 定期を見せてバスを降り、慣れた緩[ゆる]やかな坂道を上ってゆく。 程なくして見えてきた校門には、まだ人気[ひとけ]はなかった。
 けれどそれも当たり前のこと。始業まで後1時間近くある。
「外から見ると、普通の高校に見えるのにねぇ」
 誰にともなくそう呟[つぶや]く。
 南の通う白露[はくろ]高校は、ある意味有名な高校なのだ。
 曰[いわ]く、『怪談が多い』と。
 他の学校とはレベルも桁[けた]も違う。そして実際、 日常的に怪奇現象が起こっていたりもするのだ。また、現象も様々で、 普通の学校の怪談で済むものから、中には人的被害が出るものまである。 そのために作られた白露高校独特のクラブまであったりする。
『悪霊退治部[ゴーストバスターズ・クラブ]』
 かなり古い歴史を持つこのクラブは今現在、南が部長を務めていたりする。
「あ、参考書、部室に置いて帰ったんだっけ?」
 昨日、ついつい忘れて帰ってしまったのだ。今すぐ必要、というわけでもないのだが。
「どーしよっかなぁ」
 腕時計で時間を確認しながら、南は校内へと足を踏み入れた。




→ 部室に取りに行かなきゃ。

→ ま、放課後に行くし、いっか。



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