→

かみさまの手のうえ

　それは、必然としてそうなったのだと思う。
　あの、１輪の白い花に出逢ったことも。
　荷物もろくに持たず、普段着のまま列車に乗り込んだことも。
　知らないはずの路線を乗り継いで、山奥のあの村へと降り立ったのも。
　きっと、必然だったのだ。
　私はその時普通の状態ではなかったし、私と接する人々も「そう」だったと思う。
　何かに動かされるまま、導かれるままに、私はそこへ降り立っていた。

　『わたし』の―――――「人魚」の暮らした地へ。

ＮＥＸＴ

ＴＯＰ　　 ＣＬＯＳＥ　　 ＮＯＶＥＬＳ　　 ＭＡＩＳＥＴＳＵ