春雷 −片翼の飛天−




 あ、ヤバ…
 明日、提出締め切りのプリント。
 気がついたのは家に帰ってだいぶんたってからのこと。
 外の豪雨なんか気にしないで、ゴハン食べてくつろいでテレビ見てた。ぼーっとしてたんだけど、 ふと頭の中をよぎってったのがそのプリントのことだった。
 時計を見てああ8時。ガッコ、まだ開いてるかな。
 すごくメンドかったけど、明日は絶対だとかって言われてて、また説教くらうのヤだったから、 どばどば降ってる雨の中、しょーがないかとか思って家を出た。
 説教よりは雨のがマシかなとかって思ってたんだけど、 台風も来てないくせに雨は滝の下にいるみたいだし、 風はあたし飛ばされるんじゃない? ってくらい強いし。傘[かさ]なんて役に立ってない。 せいぜい顔を守るくらい。けどその顔だって雨はばしゃばしゃあたってくる。 何か足の先もキモチワルイし最悪。
 母さんに「レインコート絶対着ていきなさい」って言われたわけがわかった。 そのおかげでレインコートの下の鞄[かばん]だけは何とか無事だけど。けどもーやだ。雨キライ。 でも今から家に帰んのも何か悔しい。
 雨と風にヤになりながら、ガッコにたどりついた時には、やっぱ全身ずぶぬれだった。 屋根があるってコトに感謝したの初めてじゃない? あたし。
 雨ぐしゅぐしゅでサイテーとか思ったけど、我慢して職員室行って、 プリント取りに来ましたって言ったら、「まあ、 こんな雨の中来たの?」って残ってたオバサンに言われてキレそーになった。 見りゃわかるだろーに。
 鍵[かぎ]もらって、教室行って、机の中探してプリント取って、鍵閉めて、オバサンに鍵返して。 さ、帰ろとか思って廊下の窓見たら、いきなり雷が鳴った。
 うわ、帰れないじゃんあたし。雷なんか鳴ってんじゃないってんの。雷はスキだけど、 トキとバアイによる。
 あ、また光った。
 しょーがない。1時間くらい待てば大丈夫かな。あたし的には帰ってシャワー浴びたいんだけど。 だってマジで気持ち悪いし。タオル借りたから顔はとりあえず平気だけど髪の毛とか乾かしたいし。 このまんま長いこといたら風邪ひくってたぶん。
 んなコト思ってもしょーがないから、屋根の下で座って雷見てた。
 雷はキレイ。音ウルサイけどカラダに響いて何かキモチイイし。怖いなんて全然思わない。
 あ、光っ……?
 何? 今の。何かおっきな影。
 あっちの方って…体育館?
 何か落ちてきたって絶対。…行ってみるかな。どーせ雷おさまるまで帰れないし。
 決めてあたしは立ち上がった。



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