「きゅぅぅん…」
 甘えたような声に、私は窓の外から視線を戻してはっぴぃを抱き上げた。
 小さな体。それでも温かくて安心する。
 種類なんて気にしないタチだから、ややこしい名称は覚えてないけど、「黒い鼻の可愛い小型犬」。 はっぴぃを表すならそれでいい。はっぴぃは、はっぴぃだし。
 それにしても、何だかちょっと息苦しい?
 操縦はフリーモードにしてあるから、プログラム通り進んでるはずだけど。でもこの息苦しさは?
 かなり嫌な予感。
「これだから安物のレンタルシップは…」
 ごそごそとボードを探って、ほこりの被ったボンベが二つ。
 ほこり被ってるのはちょっとアヤシイけど、仕方ない。
 はっぴいと私、ひとつずつ装着して、酸素の補給を得る。
 キュゥン…
 変な音がしたのは…備え付けの小窓?
 ちょっと、普通小窓が軋[きし]む?
「着いたら、再点検してもらわなきゃ」
 ライセンス持ってたって、船がヤバイんじゃ対処のしようがないじゃない。
 微妙な気配を感じてか、はっぴぃがすり寄ってくる。
 私ははっぴぃをぎゅっと抱きしめた。
 大丈夫。はっぴぃがいれば大丈夫。
 はっぴぃと一緒なら大丈夫。
 目的地はもうすぐそこ。
 ぽっかり浮かんだ丸い天体が、窓の外に映っていた。



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