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「俺は部室に行って道具取ってくるから、東都は先に放送室に行っててくれ」
「了解。ダッシュで行って来なさいよ」
 渡り廊下を走りながら言って、ホールに着いた途端[とたん]二手に分かれる。
 階段を下りて放送室へとスピードを上げると、ドアの所に人影があった。
 ドアに手をかけ開こうとしているのは…
「相馬[そうま]!?」
 呼ばれて1年の相馬 拓人[そうま たくと]がこちらを向いた。それと同時にドアが開かれ、 中から黒い何かが溢[あふ]れ出した。
「 !!」
 対処が取れず、呑まれる二人。視界が遮[さえぎ]られ、何も見えなくなる。
「うっわー。ヤバいわね。パニくってなきゃいいけど」
 芦澤の言っていた<遮断者>とは、その名の通り、世界との交信を遮断する者。
 居る場所は変わらないけれど、声は吸い込まれて届かないし、 もちろん向こうからの音もこちらに届いて来ない。視界も闇の中にいるようで、何も見えない。
 自分は<遮断者>を知っているから良いものの、 今年入部した相馬が下手にパニックに陥っていなければ良いのだが。




→ どーしよう。様子見のつもりだったから何も持ってないのよね。

→ そういえば、今朝部室で小瓶を持って来たっけ。



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