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「今、対悪霊用武器ないじゃない(汗)。一旦退かなきゃ」
 必要があれば、後で部員を引き連れて調査に来なければならないだろうけど。
 思って教室を出ようとしたその時。
「 !!」
 何か、強い衝撃を受けたことだけを感じて、南の意識は沈んでいった。


































 誰かの声が聞こえる。
 知っている声のような気もするけれど。
(誰だろう)
 思ってぼんやりと目を開ける。
「 !?」
 覚えのない天井が目に入って、南はがばりと身を起こした。
 そのせいでか、くらりとする視界。
(???)
「あら東都[とうづ]さん。よかった目が覚めたのね」
 聞こえてきた声に首をめぐらせると、丸眼鏡[まるめがね]におばちゃんパーマの白衣の先生が、 カーテンを開けながら入ってくる所だった。
「宇野田[うのだ]センセイ?」
「ずいぶん長いこと目が覚めなかったから、どうしようかと思ったわ」
 にこにこと微笑んで告げる。
「頭打ってたみたいだけど、吐き気とかはない?」
「あ、はい」
 そういえば頭の後ろがずきずきするけれど、吐き気などは感じない。
「…ここ?」
 今更ながら自分がいる場所を認識し、南は疑問を覚えた。
 仕切られたクリーム色のカーテン。その向こうに見えるのは宇野田先生の机。 さらに向こうに体重計。自分が寝ていたのは固いベッド。
「どうして保健室なんかに?」
「社会科学習室で倒れてたのよ、東都さん。また何か出たんでしょうけど、 無謀[むぼう]な事はしないでちょうだいね」
 眉をしかめて言われて、南は内心慄[おのの]きながらこくこくと頷[うなず]いた。 一見優しげな先生は、けれど昔、当時の不良のトップを土下座させたという伝説を持っているのだ。
「社会科……あ !!」
 思い出して南は布団[ふとん]を握りしめた。
(不覚ね)
 次はメンバーをそろえて挑[いど]まないと。
「そうそう、今4時間目なの。授業出られそう? んー、 でもあと10分ぐらいでお昼休みになっちゃうわねぇ。 具合悪そうならこのまま帰ってもいいけど、どうする?」
 のんびりと問われて、南は少し考えた。




→ 帰ってもいいなら帰ろうかな。 頭ズキズキするし。

→ このあたしに怪我させた悪霊をどうにかしなきゃ。 もちろん学校にいます。



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