「複支路」へ戻る→*
「全員で行くのも多すぎるから…。柚香、寺元[てらもと]って来てる?」
「『道具の手入れをする』って倉庫にいるはずよ」
「そ。それじゃ、メンバーは寺元と、橋塚が来たら橋塚と。あと芦澤と…浜松と姫木、行きたい?」
「はい、行きたいっス」
「ええ、行きたいですわ」
問いかける南に、二人はめいいっぱい強く頷[うなず]いた。
「それじゃ、浜松と姫木で。こんな所かしら?」
「東都はどうするんだ?」
「あたし? もちろん行くに決まってるじゃない。このあたしが行かなくてどうするのよ」
「わたしと渡瀬やんと、来てない相馬と石原[いしはら]は?」
「柚香は待機[たいき]と書類をちょっとお願い。渡瀬やんは、 あの二人に体トレ基本セットよろしくね」
とう柚香に、南はにっこりと答えた。
「じゃ、活動用紙出してくるから、寺元を呼んで来て準備よろしくね」
そう言って、日付を記した活動用紙を手に、南は生徒会室へと向かった。※
「入り口前、反応は?」
ゴーグルを装着した橋塚に、南は固く声をかけた。
「反応、特にはありません」
次期武器使用担当者として寺元に鍛[きた]えられている橋塚は、びくびくとそう告げる。
「周波間隔は?」
「正常値圏内です」
「じゃあ、開けるわよ」
職員室で借りてきた鍵を手に、ぐるりと回して戸を開ける。
橋塚は周りを警戒しながら社会科学習室へと敷居[しきい]をまたいだ。
「…反応、ありません」
橋塚の言葉を聞いて、部員も次々と社会科学習室へと入る。
「確かに、これといって妙な気配はありませんわね」
部屋を見渡し、姫木もそう告げた。霊感少女を自負する彼女の感覚は、かなり高い感度を誇る。
「ん――、移動されたのかしら。厄介[やっかい]ね。」
言いながらぐるりと部屋内を歩く南は、ふと気になる場所を感じ、足を止めた。
「東都?」
呼びかける芦澤の声と被[かぶ]るように、廊下を勢い良く駆けて来る足音が聞こえた。
「3階西校舎側の渡り廊下に悪霊出現、怪我[けが]人ありよ !!」
息せき切って告げる柚香に、部員の間に緊張がはしる。
→ すぐに行くわよ。
→ ちょっとココが気になるから、先に行ってて。