「さ、帰りましょう」
 滝壷[たきつぼ]を背にして差し出した手を、 奏[かなで]さんはしっかりと握[にぎ]ってくれた。
 つないだ手に笑んで、一緒に坂を下る。

 ここへ来たのは秋のはじめ。
 白い花を1輪、道連れに。
 けれど今あるのは、遠い昔に花をくれた、やさしい手。
 ぱしゃり、と水面で何かが跳ねた。
 ひょっとしたら、すべては、予[あらかじ]め決まっていたのかもしれない。


The End.





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