「さてと、ルナ、帰るか?」
 言われてルナが振り向くと、そこには見慣れた頭[かしら]の姿があった。
 安心する、暖かい瞳。
 けれどルナは、答える事ができず、そのまま俯[うつむ]き、考え込んでしまった。
 自分は盗賊。それは揺るぎないことで。けれど、 同時に『白のシャーレ』なのだと自覚してしまった。
「クゥイン・テルナ。貴女[あなた]の好きなようにして構わないのよ」
 シセンが優しく声をかける。
 今はまだ、シャーレとして神殿に居ることは強要しない、と。
(あたしがやりたいこと…?)
 考え、ルナはそっと顔を上げた。
「頭、あたし……あたし、世界を廻ってみたい。『世界』の創った世界を見てみたい。 まだ行ったことのない所に行ってみたいの」
 ジンはその言葉に、ふいを突かれたような表情を見せた。
「本気でそう、思うのか?」
「うん、思う」
 そう言いきったルナの瞳には、ひとかけらの曇[くも]りも見えなかった。
 ジンはふっと表情を緩めた。
 そのまま、ルナの頭に手を置く。
 少し、背が伸びたかもしれない。
(子供は成長するもんだよな)
 心の中で知らず、笑みがこぼれた。
「…ちゃんと帰って来いよ」
 ルナはその言葉にはっとして、頭を見上げた。
「お前は『風』だからな。 いつまでも留めておくことはできねぇと思ってたが……マジでちゃんと帰って来いよ?」
「頭……ありがとう」
 ジンの台詞にルナの顔が輝いた。
 育ての娘の素直な表情に、ジンは苦笑した。
「俺もついて行ってやるよ。コドモの一人旅は何かと危ないからな」
「ラーク……本当に?」
 その驚きと喜びの混じった声に、ラークはああ、と不敵な笑みを浮かべた。
「ありがと。よろしく」
 ルナは笑んで右手を差し出した。

 窓からやさしい風が吹き抜ける。
 その向こう、陽の射す空は蒼く、白い雲が高く浮かぶ。
 世界の空気を運ぶ、大きな風。
 遠いどこかで、『世界』が微笑んだ様な気がした。



The End.


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さて、最後の隠しスペースです☆
各章のここに気づいてた方って、どれくらいいらっしゃるのかしら?
ここまで見つけてくれた方におまけです♪
http://minori.s21.xrea.com/novels/snow/shiro/shiro-thanks.html
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画像になってますので、重いのが駄目な方は回避して下さいませ(すいません)。
では、ありがとうございました。