春が過ぎて、梅雨も明けて。今は夏に入ったところ。
 暑いしセミの声うるさいけど、夏の晴れた空は嫌いじゃない。
 雨は相変わらずキライだけど。
 学校の生活が普通すぎて、春のあの夜のことは、今はもう、 半分夢だったんじゃないかと思ってる。
 …あのあと熱出して寝込んだし。




「あーちゃん、見た?」
「何を?」
 モップ持ったまま、教室に入ってきた友達に首をかしげる。
「校門
「ふぇ?」
 昨日のドラマとかを想像してたから、言われた言葉が一瞬わからなかった。
「だから、校門の所に、格好いいお兄さんがいるんだって
 ああ、そーゆーこと。
「誰かのカレシなんじゃないの?」
 授業終わったし。
 言いながら、席を立って窓ぎわに寄る。
 校門の向こうに人待ちみたく、男の人がガードレールにもたれて立ってた。
 茶髪じゃなくて、黒くて短めな髪。背は高めかな。
 制服じゃないから、どこの学校のヒトかはわかんないけど。
 格好イイかどうかなんて、顔が見えな……
 こっち見上げた瞳[め]、強くて、そらせなくて。
「…何で?」
 まさかとか、そんなはずないじゃんとか、今更になってとか、色々アタマのなか回るけど、でも。
 あたし見たまま、明らかに微笑まれて。心臓が、大きく音立てた。
「あーちゃん !?」
 走り出したあたしの後ろから声、聞こえたけど。
 階段駆け下りて、昇降口出て、まっすぐ校門に。
 目の前に立って、息切らして。でもアタマ真っ白で、コトバなんて出てこなくて。
 でも何か、奥の方から込み上げてきて。
「ふっ…」
 押さえ切れなくてぼろぼろ泣くあたしに。
「ごめん」
 言って、頭かかえられて。
 もっといっぱい涙が出てきた。
「…何、で?」
 やっとそれだけ声が出て。
「会いたくなったんだ。あんたのおかけで俺、もう殺されなくて済むから」
「…いなく、なったくせに。」
 あのとき、全部消えてて。
「ごめん」
 腕を外されて、あたしは顔を見上げた。
「でも、もう、しないから。だから」
「…だから?」
「だから―――――」














そのひとに会ったのは、嵐の日のことでした。
でも、嵐が過ぎてもまだ。そのひとは。

あたしの、そばにいる。







The End.



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